ビジネスシーンやフォーマルな場、就職活動や冠婚葬祭など、スーツを着用する機会は意外に多いもの。きちんとした印象を残すためにも、スーツは常にシワやヨレのない美しい状態に保ちたいですよね。とはいえ、頻繁にクリーニングに出すと費用がかさみますし、デリケートな素材だと痛みが進む可能性もあります。そこで今回は、自宅で簡単にできる「シワ&ヨレを防ぐスーツのお手入れテク」をご紹介。正しいメンテナンスを覚えて、大切なスーツを長く美しく着こなしましょう。
スーツのお手入れでまず意識したいのが、着用したあとのブラッシングです。外出するとどうしてもホコリや花粉、ちりなどが生地の表面に付着してしまいます。それらを放置すると、繊維の奥まで入り込んでスーツの劣化やにおいの原因になるだけでなく、シワやヨレが定着しやすい状態にもなってしまいます。 そこで、帰宅後にはまずスーツをハンガーにかけ、上から下へやさしくブラッシングを行いましょう。ブラシは獣毛ブラシや静電気防止タイプなど、衣類専用のものを使うのがベスト。生地表面に付いたホコリやごみを取り除くことで、繊維の乱れを整え、シワが深くなるのを防ぐ効果も期待できます。
ブラッシングのコツは「軽い力でなでるように動かす」こと。強くこすりすぎると生地を傷める原因になるので要注意です。とくにジャケットやスラックスの折り目部分、ポケット周辺などは念入りにブラッシングを行うと、ほつれやダメージを早期発見する機会にもなります。小さなケアを習慣づけるだけで、クリーニングに出す頻度をぐっと減らすことも可能です。
スーツは肩周りやウエストラインなど、立体的なフォルムがとても重要。そのため、脱いだあとにどう保管するかがシワ&ヨレ対策の要となります。もっとも簡単なのが適切なハンガーを使うこと。肩幅が合っていないハンガーを使うと、肩先が変に伸びたり型崩れを起こしたりする原因になりやすいので、スーツの肩幅に合った厚めのハンガーを選びましょう。 また、ズボン(スラックス)は専用のボトム用ハンガーや、クリップ式のハンガーで吊るして保管するのがおすすめです。二つ折りにしてハンガーに掛ける場合でも、なるべく折り目をそろえ、スラックスのウエスト部分をしっかり固定しておくと、ヨレにくくなります。特にウール素材などは重さがあるため、正しい掛け方でないとシワが深くなりやすいので注意が必要です。
そしてスーツをハンガーにかけたら、風通しの良い場所にしばらく放置して湿気や汗を飛ばします。クローゼットの中にすぐしまい込むのではなく、数時間でも風に当てるだけでにおい対策やカビ対策にも効果的。とくに梅雨や夏場は湿度が高く、生地が蒸れてヨレやすくなるので、小まめな換気や除湿剤の活用も心がけましょう。
スーツを長く着ていると、気づかないうちにシワがついてしまうことは避けられません。とくに膝や肘、背中などは常に動きがあり、生地が張ったり曲がったりするためシワが入りやすい部分です。そこで活用したいのが、アイロンやスチームアイロン。 一般的なアイロンでプレスする場合は、あて布を使用して直接アイロンの熱が生地に触れないようにするのが鉄則。温度の設定もウールなら中温(約140~160℃)を目安にし、押しつけるのではなく、軽く当てて滑らせるように動かしましょう。なお、スーツのツヤを防ぐためにも、基本的には裏からアイロンがけをするか、あて布をしながら表側を素早く仕上げるのがおすすめです。
一方で、手軽さを求めるならスチームアイロンが便利。ハンガーにかけたまま、生地全体にスチームを当てるだけでシワがやわらぎ、ふんわりとした風合いを取り戻すことができます。特に出先や忙しい朝など、短時間で身だしなみを整えたいときには心強い味方です。ただし、あまり近づけすぎると水滴が生地に染み込んでしまう可能性があるため、生地から5~10cmほど離して蒸気を当てるようにしましょう。
スーツは長時間着用すると、汗や皮脂汚れ、外部からのにおいなどが蓄積されがち。そのまま放置していると、繊維ににおいが染み付き、シワも取れにくくなる場合があります。そこでおすすめなのが、消臭スプレーや除菌スプレーの活用です。 ただし、スプレーを吹きかけすぎると生地が湿ってしまうこともあるため、スーツから少し離し、全体をまんべんなく噴霧しましょう。消臭・除菌効果のあるスプレーは手軽で便利ですが、成分によっては色落ちの原因になる場合もあるので、目立たない部分で試してから使うと安心です。
また、クローゼットにしまう際は、湿気取りのシートや除湿剤を入れておくとカビや虫食いを防ぎやすくなります。特に天然素材のウールなどは湿気に弱いため、定期的に取り替えながら、クローゼット内を清潔に保ちましょう。目に見えない汚れや雑菌が増えると、シワや生地のヨレだけでなく、生地自体の寿命を縮める原因にもなることを覚えておきたいですね。
食事中にソースやドリンクをこぼしてしまったり、電車の吊り革に触れた手でジャケットを触ったりして、スーツの一部を汚してしまうこともあるでしょう。そんなとき、すぐにクリーニングに出すのは手間もお金もかかるもの。実は、自宅でできる部分洗いでも、ある程度の汚れは十分対処できます。 まずは濡らしたタオルや布で汚れ部分を軽く叩き、汚れを浮かせるようにしましょう。その後、洋服用の中性洗剤を少量混ぜたぬるま湯を含ませた布で、押しあてるようにシミを吸い取ると効果的です。ゴシゴシこすると生地が傷むので要注意。また、処理後はドライヤーで強く熱するのではなく、自然乾燥またはタオルドライで生地を優しく乾かすほうが生地に優しいです。
もちろん、油汚れや大きなシミなどは自宅ケアでは対応しきれないこともあります。そうした場合は無理せずクリーニング店に相談を。放置して時間が経つほど染み付きが強くなり、シワやヨレの原因にもなるので、発見次第早めに手を打つのがポイントです。
こまめなお手入れをしていても、長期間着用しているうちに蓄積する汚れや型崩れはどうしても避けられません。そこで必要になってくるのが、プロのクリーニングです。しかし、スーツはクリーニングに出しすぎると生地が痛んだり、風合いが損なわれたりする可能性もあるため、適切な頻度を見極めることが大切です。 目安として、通勤や仕事で週に数回着るスーツなら、シーズンに1~2回程度を目安にクリーニングに出すとよいでしょう。夏場や梅雨など汗ばむ季節は、もう少し多めに出す必要があるかもしれません。逆に、年に数回しか着ないフォーマルスーツなら、汗や汚れが気になるときだけクリーニングに出すなど、使用頻度に応じて柔軟に判断するのがベストです。
プロのクリーニングに出す際は、信頼できるお店選びも重要。ドライクリーニングだけでなく、スーツの素材や汚れに応じてさまざまな方法を提案してくれるクリーニング店なら、風合いを損ねることなく仕上げてくれます。さらに、ジャケットとスラックスを別々のタイミングで出すと色が変わる恐れもあるため、上下セットで扱うよう依頼すると安心です。
スーツのお手入れは一見手間がかかるように思えますが、実は毎日のちょっとした習慣でシワやヨレを予防できることがたくさんあります。帰宅後のブラッシングや風通しの確保、適切なハンガーの使用など、小さな積み重ねがスーツのコンディションを左右します。さらに、アイロンやスチーム、部分洗いを駆使すれば、大がかりなクリーニングに出す前に十分リカバリーできるケースも多いです。 もちろん、大切なスーツをきれいに保つためには、着用後の放置は厳禁。こまめにケアすることで、生地の寿命を延ばすだけでなく、いつでもピシッとした姿勢でスーツを着られるというメリットがあります。特にビジネスシーンやフォーマルな場面では、身だしなみが相手に与える印象を大きく左右しますから、お手入れの積み重ねが自分の評価にもつながるでしょう。
ぜひ今回紹介した自宅で簡単にできるお手入れテクを活用して、日常的にスーツをケアしてみてください。ブラッシング、ハンガー選び、アイロンがけ、そして適度なクリーニングの利用を組み合わせれば、大切なスーツをいつまでも美しくキープできるはず。きちんと手入れされたスーツを身にまとい、自信をもってさまざまなシーンに臨んでくださいね。