日頃、あまり意識していないかもしれませんが、姿勢や歩き方、座り方といった「立ち居振る舞い」は、意外と周囲からよく見られているものです。背中が丸まっていたり、足を引きずるように歩いていたり、椅子にドスンと腰かけていたりすると、相手に与える印象は想像以上に悪くなってしまう可能性があります。逆に、きれいな姿勢でしなやかに動く人は、それだけで品格や自信を感じさせることができるもの。
そこで今回は、「正しい姿勢・歩き方・座り方」を身につけるためのポイントを解説します。ちょっと意識を変えるだけで、あなたの印象や雰囲気が大きくアップするかもしれません。普段の生活やビジネスシーン、フォーマルな場など、あらゆるシーンで役立つ知識をぜひマスターしてみてください。
姿勢と聞くと「猫背を直そう」というイメージが真っ先に思い浮かぶ方も多いでしょう。しかし、正しい姿勢がもたらすメリットは見た目の美しさだけではありません。身体への負担の軽減や、印象の向上、さらには呼吸や血行の改善など、たくさんのプラス要素があるのです。
・見た目の印象が格段にアップ
背筋がすっと伸びた姿勢は、それだけで自信に満ちた印象を与えます。実際、モデルやアナウンサーなど「見られる仕事」をしている人ほど、姿勢にこだわっているもの。立っていても座っていても、きれいな姿勢でいる人は周囲にポジティブなエネルギーを届けます。
・身体への負担を減らせる
猫背や反り腰など、背骨が不自然な状態でいると肩こりや腰痛が起こりやすくなります。正しい姿勢を保つことで、筋肉や骨格への負担を最小限に抑え、疲れにくい身体を手に入れることが期待できます。
・呼吸が深くなる
丸まった背中や閉じた胸まわりでは十分な呼吸ができません。姿勢を整えると胸が開きやすくなり、深い呼吸が可能になります。酸素の取り込み量が増え、結果として集中力のアップやリラックス効果も得られるでしょう。
正しい姿勢の第一歩は「立ち方」。普段なんとなく立っているだけでも、少し意識を変えるだけで大きく印象が変わります。
・腰幅で足を開き、重心を中央に
まず、足を肩幅よりやや狭め(腰幅程度)に開き、左右にブレないように立ちます。両足に体重を均等にかけるのがポイント。片足に体重をかけるクセがある人は、左右の脚の筋肉や骨格に歪みが生じやすくなるので要注意です。
・お腹に軽く力を入れ、背骨を意識する
猫背の人は、骨盤が後ろに倒れ、背中が丸くなりがち。反対に反り腰の人は、骨盤が前に倒れ腰が反っている状態です。どちらにも共通しているのは、体幹がしっかり保てていないこと。丹田(おへその下あたり)を少し引き上げるイメージで力を入れ、背骨を長く伸ばすように意識しましょう。
・肩の力を抜き、首を長く保つ
背骨をまっすぐ伸ばそうとすると、つい肩に力が入りすぎる人も。肩は下げ、首の後ろに余裕をつくるように意識しましょう。アゴを少し引き、目線は正面やや上あたりを見据えると自然な姿勢を保ちやすくなります。
姿勢が整ったら、次は歩き方を意識してみましょう。フォーマルな場や人前に出るときは、歩き方ひとつでも印象がガラッと変わります。
・踵から着地し、つま先へ重心を移動
正しい歩き方の基本は、「踵→足裏→つま先」の順で着地すること。足全体で地面を踏みしめるように歩くと安定感が増します。ペタペタと足裏全体を一気に着地させたり、つま先だけで歩いてしまったりすると、バランスが悪く見え、足音も不自然に響きがちです。
・小さな歩幅で連続的に動く
かかとからしっかり着地するためには、あまりにも大きな歩幅だと難しくなります。女性なら特に、ヒールを履く場面では歩幅を小さめに設定すると品よく見えるでしょう。大股でガシガシ歩くと、どうしてもガサツな印象を与えかねません。
・腕は軽く振り、肩と連動させる
歩きづらい場合は、肩周りがこわばっていることも考えられます。肩をリラックスさせ、腕を前後に軽く振るよう意識しましょう。ただし、大げさに振りすぎると不自然になってしまうため、あくまで「肩が動きに合わせて少し前後に動く」程度の自然な振りを心がけてください。
立ち姿や歩き方だけでなく、座り方も意外と見られています。特にセレモニー会場や電車の中、面接などでは、座っている間の姿勢がその人の品格やマナーに直結すると言っても過言ではありません。
・深く腰掛け、背もたれに頼りすぎない
座るときは椅子の前のほうにチョコンと腰掛ける人が多いですが、これでは腰や背中に余計な負担がかかり、猫背の原因にもなります。まずは椅子に深く腰掛け、骨盤を立たせるように意識しましょう。ただし、背もたれに全部体重を預けるのではなく、軽く触れる程度でキープするのがコツです。
・両膝をそろえ、足元をきれいにまとめる
女性の場合、膝をきちんと閉じて座ることで上品なイメージを維持できます。フォーマルな場では足首を少し斜めに傾ける「斜め座り」にすると、さらに美しく見えるでしょう。一方、男性は膝を軽く開いても構いませんが、開きすぎるとだらしない印象を与えるので注意。やはり足元が整っていると見た目の清潔感も保てます。
・上半身は胸を張り、アゴを引く
深く腰掛けると自然と背中がまっすぐになりやすくなりますが、背もたれに寄りかかりすぎると徐々に崩れてしまいがち。背筋を伸ばしつつ、肩はリラックスさせ、首を長く保つ感覚を忘れないようにしましょう。スマホや書類を見る際に下を向きすぎるとアゴが前に突き出てしまうため、時々姿勢をリセットすると◎です。
女性の場合、スカートやパンプスを履いていることも多く、「立ち・歩き・座り」の一連の動作が男性よりも難しいと感じるかもしれません。エレガントな雰囲気を目指すなら、次のポイントもあわせて意識してみてください。
・つま先をまっすぐ揃える
ハイヒールやパンプスを履く場面で、足元が外向きになってしまうと見た目の統一感が崩れてしまいます。立っているときや座っているときは、可能な限りつま先をまっすぐ前に向けるようにしましょう。
・手先の所作も丁寧に
歩くときや座るとき、意外と「手先」の動きも注目されます。椅子に座る前はスカートの裾を静かに整え、立ち上がるときもテーブルや肘掛けに体重をかけすぎないよう意識すると、全体の動作がしなやかに見えます。バッグの持ち方やコートを脱ぎ着する仕草も丁寧にすると、エレガントな印象が高まるでしょう。
男性の場合、「立ち・歩き・座り」が乱暴になりやすかったり、背中が反り気味になってしまったりと、女性とはまた違う課題があります。そこで、頼りがいを感じさせるスマートな所作を目指すためのポイントをご紹介します。
・肩幅以上に足を開きすぎない
男性らしさをアピールしようとして、足を大きく開いてしまう人もいますが、実はこれが逆効果になりがち。ゴツゴツとした印象を与えるだけでなく、相手によっては威圧感を感じさせるかもしれません。足を腰幅~肩幅程度に保ち、程よく安定感をキープできるようにしましょう。
・荷物を持つ時や座る時は静かに行動
椅子に腰掛けるときに「ドスン」と音を立てる、バッグや書類を「バンッ」と置くなど、乱暴な動作は周囲の空気を乱します。深呼吸をしてゆっくり行動するだけで、印象は大きく変わります。会議室や商談の場では、こうしたちょっとした振る舞いが意外に評価されるポイントです。
正しい姿勢や歩き方を意識するだけでも変化はありますが、日常生活でのトレーニングを取り入れると無理なく定着させやすいです。難しい筋トレや特別な道具がなくてもできる方法をいくつかピックアップしてみましょう。
・ドローイン
お腹をへこませながら呼吸することで、体幹を鍛える簡単なエクササイズ。背筋を伸ばしたままゆっくり息を吸い込み、お腹を膨らませたあと、長い息でお腹をへこませます。通勤や家事の合間でも気軽に実践できるので、ぜひ習慣にしてみてください。
・壁立ち
背中を壁につけて立ち、かかと、お尻、肩甲骨、後頭部が壁に触れるように意識します。この状態で数分キープするだけでも正しい姿勢を体に覚えさせることができます。普段とのズレを感じたら、意識的に壁立ちでリセットをするのがおすすめです。
・片足立ちやバランス運動
歩きやすい姿勢はバランス感覚の良さにもつながります。片足立ちや足を交差させてのスクワットなど、簡単にできるバランス運動を取り入れると、コアマッスルを鍛えて安定した歩行や立ち姿を実現しやすいでしょう。
姿勢や歩き方、座り方などの「立ち居振る舞い」は、実は周囲からしっかりと見られています。どんなに素敵な服装やメイクをしていても、姿勢が悪かったり所作が乱雑だったりすると、せっかくの魅力が台無しになりかねません。逆に、きれいな姿勢と動作が身についていれば、どんな装いもより品格あるものに引き上げられ、周りからの好感度もアップするでしょう。
日々の習慣やちょっとした意識の変化で、立ち居振る舞いを大きく改善することは可能です。まずは壁立ちやドローインなど、簡単なトレーニングを取り入れながら、姿勢を整える感覚を身につけてみてください。慣れてくると、歩き方や座り方も自然と美しくなり、自分自身も疲れにくく快適に過ごせるようになるはず。
フォーマルな場やビジネスシーン、プライベートでも、自信をもって人と接するために、ぜひこの機会に正しい姿勢・歩き方・座り方をマスターしてみましょう。あなたの印象や雰囲気が、きっと今よりずっと魅力的に変わるはずです。